抗うつ剤とは?種類と選び方を解説します
心の病気であるうつ病には、治療薬として抗うつ剤が用いられます。
抗うつ剤と聞くと、どのようなイメージがわきますか?
・怖い、危険な薬
・副作用や依存性が気になる
とさまざまなイメージがわき、服用を躊躇する人もいるはず。
グローバル製薬企業であるグラクソ・スミスクラインの調査によると、抗うつ剤に対して漠然とした不安や緊張、焦りがある人は薬を処方されても途中で服用を中断してしまう人もいると判明しているんです。
うつ病であると周囲の人に「バレたくない」という気持ちを持っている人もいます。
うつ病は病気です。
自然治癒で症状が軽快する場合もありますが、約60%以上の人が半年以内、あるいは2年内にうつ病を再発するといわれています。
抗うつ剤は服用することで、不安や落ち込んだ気持ちを和らげ、意欲を回復するように働きかけ、人間本来の活動性を向上させてくれるお薬です。
しかし、抗うつ薬にはさまざまな種類があり「どの薬を選べばいいのか分からない」と思っている人もいるはず。
本記事では、抗うつ剤の選び方に困っている人へ向けて、お薬の種類についてお伝えしていきます。
抗うつ剤を飲む前に、どのような種類があり、効果はどう違うのかをチェックしていきましょう。
抗うつ剤の選び方について
抗うつ剤には様々な種類があり、それぞれ効果や効き始め、副作用の出やすさとたくさんの異なる点も存在しています。
そのため、抗うつ剤の選び方は非常に重要になってきます。
抗うつ剤で代表的なのは、以下の5つです。
・四環系抗うつ剤
・SSRI
・SNRI
・NaSSA
この中で一番古いのは、上から順に三環系抗うつ剤から四環系抗うつ剤と続き、一番新しいのはNaSSAです。
それぞれの特徴を比較してみるとこのようになります。
【引用元:エイドワン-抗うつ剤・精神安定剤・抗不安薬の選び方】
分類 三環系 四環系 SSRI SNRI NaSSA 効果が現れるまで 1~2週間 約4日 2週間~2ヵ月 約1週間 5日~1週間 特徴 SSRIやSNRIでは効果が不十分な場合や重症な人に用いる うつ病治療の始めの段階で用いられる 商品名 アモキサン
アナフラニール
トリプタノールテシプール
テラテミド
ルジオミールパキシル
ジェイゾロフト
レクサプロサインバルタ
イフェクサー
トレドミンリフレックス
レメロン
三環系抗うつ剤は一番歴史が古く、効果もピカイチ。
しかし、その分副作用も発現しやすいという特徴もあります。
現代のうつ病患者にも処方されていますが、副作用が緩和されているSSRIやSNRIの効果では満足できなかった場合のみに処方します。
重いうつ病患者を抱える人は三環系抗うつ剤や四環系抗うつ剤が適しています。
まれに初めから抗うつ剤を調べに調べて、診察の際に開口一番「一番強い薬をください」と言ってくる患者さんがいるようです。
しかし、初めから強い抗うつ剤を飲むという選択肢はまずないといえます。
そこは医者の判断に委ねる必要がありますが、薬を選ぶ際には専門医の意見もしっかり取り入れたほうがいいといえますね。
※それぞれの効果について詳しく知りたい人はコチラの記事をお読みになってください。
SSRIやSNRI
SSRIやSNRIについて少し詳しく紹介します。
何やら英字がたくさん並んでいますが、これは薬の名称を略したものです。
Selective Serotonin Reuptake Inhibitor(選択式セロトニン再取り込み阻害薬)
Serotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitor(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
SSRIは幸せホルモンであるセロトニンに作用し、SNRIはそのセロトニンとノルアドレナリンにも働きかけると覚えておきましょう。
代表的な薬はSSRIがレキサプロやジェイゾロフトで、SNRIはサインバルタやトレドミンです。
うつ病治療で第一選択薬として、よく用いられているのはSSRIです。2週間から2ヵ月で効果を発揮して、心のバランスを保ってくれます。
SNRIも似たような作用ですが、効果の効き始めは約1週間程度とSNRIよりも比較的早いといえます。
もちろん個人差はあるので、一概には言い切れませんよ。
NaSSA
NaSSA(ナッサ)は、抗うつ剤の中で新しいタイプのお薬です。
正式名は、Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)です。
脳内で少なくなってしまったセロトニンとノルアドレナリンの分泌を促進させ、セロトニンが効率よく働けるように作用します。
もっとも効果が強いといわれており、飲み始めに強い眠気と食欲が増大するという副作用が発現しやすいといわれています。
最初は副作用との戦う必要がありますが、身体も順応しますので慣れを待つしかないですね。
うつ病とは別で不眠症や食欲不振といった症状を抱えている人であれば、何ら問題のない副作用です。
しかし、仕事や子育てに忙しい人からすると少々困ってしまう可能性も否定できません。
NaSSAの代表薬はレメロンやリフレックスで、効き始めはだいだい5日~1週間程度です。
三環系、四環系抗うつ剤
三環系抗うつ剤は先ほども述べたように、抗うつ剤の中でも古いお薬です。
NaSSAと同じく強い効果を持ちますが、その分副作用が出やすいものでもあります。
四環系抗うつ剤は、三環系抗うつ剤の副作用を和らげるために開発されたお薬。
そのため三環系抗うつ剤よりも、効果がマイルドです。
それぞれの代表薬は以下の通り。
トフラニール、アナフラニール、トリプタノール、ノリトレン、アモキサン
テトラミド、ルジオミール
三環系は1~2週間で効き始め、四環系は約4日と他の抗つつ剤よりも速やかに効果を発揮します。
三環系、四環系抗うつ剤はSSRIやSNRIでは効果を得られない、または重度のうつ病患者に処方されるお薬です。
正しく飲めば怖くないお薬
抗うつ剤=怖いというイメージがつくようになってしまったのはなぜなのでしょうか?
抗うつ剤だけでなく、精神科系のお薬は怖いというイメージがつきものです。
テレビドラマや映画に出てくる悪者キャラクターがこういった薬物を飲んでいるためか、はたまた単純に副作用や依存性が強いイメージがあるからかもしれません。
もちろんお薬なので少なからず副作用や依存性のリスクはあります。
しかし抗うつ剤は正しい使用方法を心がけていれば、危険なお薬ではないのです。
下記は一般的な抗うつ剤の飲み方です。
・服用継続可能かは6~8週間後に判断する
・改善したとしても半年~1年は服用を続ける
「効果がない!」と思い、短い期間で何度もお薬を変更するのはあまり賢明な判断ではありません。
抗うつ剤は効くまで時間がかかること、症状によって飲める量が違うということをきちんと把握しておきましょう。
抗うつ剤の処方はどこで受けられる?
うつ病になってしまった場合、どの科で診てもらえばいいのでしょうか?
既にうつ病になっている人なら当たり前に感じるかもしれませんが、初めて発病した人は「どこに相談すればいいのか」と不安に思っている人もいるはずです。
答えは実に明瞭。
うつ病は精神・神経に関わる病気なので精神科や精神神経科の部門がある病院で診察を受けましょう。
心療内科でもOKです。
心療内科は軽いうつ病だけを診察している医師もいますので、迷って選択できないという状況であれば心療内科と精神科の両方がある大きな病院を選択するのが賢い選択です。
「うつ病は逃げの病気」ではありません
自分に対しても他人に対しても厳しい一面がある日本人は、うつ病=逃げの病気だと考えがちです。
今でこそうつ病というとどの世代にも伝わるようになっていますが、一昔前まではうつ病は甘えだという考えが浸透していました。
その名残はまだまだ存在しており、自分ではうつ病だと気づいていない人も。
・落ち込んでいるからなんだ
と自分で追い打ちをかけてしまうのは、良くない兆候です。
西洋や欧米では、家族でも友人でもない第三者であるセラピストと気軽にお話をするだけという文化が根付いています。
日本人はそのような習慣がまだまだ浸透していないため、無理にでも問題を自分の中に抱え込もうとしてしまうのです。
そうならないためにも、うつ病と思われる症状がある場合は抗うつ剤で対処する選択肢もあるということを覚えておきましょう。